泣くのは嫌だ笑っちゃおう、進め

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ネガティブは嫌い






人間、落ち込むこともある。
誰かにこぼしたいときもある。

だけど、それって意味あるのだろうか。



僕の人生で初めて出来た友人は15の時に死んだ。
僕の人生で一番尊敬している人も3年前に死んだ。

落胆する僕を慰める友人はお前は死神のようだとおどけて見せた。

ふざけただけの友人の言葉が、事実のように感じた。





「お前、ほんと笑わないな。あたしのことそんなに嫌いか?」

もしゃもしゃとハンバーガーを齧りながらそう言ったのは、ことね。
昔よくつるんでた音楽仲間の一人だ。


ジュン「いや、そんなことはないですけど。」

僕は暗かった。
人が嫌いというか、仲良くなるまでにずいぶんと時間がかかるタイプだった。
なんというか、人に自分の事を知られるのが嫌いで、なかなか打ち解けられない。
本当に仲の良い友達はごく一部でそれ以外は正に「敵」に見えたのだ。


ことね「はぁー、暗い。暗いよ。どうせグズグズしてるだろうってからこうやって遊びに誘ってやってるのにさ。」
ジュン「グズグズなんてしてないですよ。」
ことね「してんじゃねーか。あとまずその敬語止めろ。よそよそしくて鬱陶しい」
ジュン「いや、もうクセなんで。別にそんな深い意味ないです。」
ことね「まったく。どうしたものかね。」


年上のことねは僕の事をだいぶ気に入っていた。
ことあるごとに「あいつも誘ってやろう」と誘ってきた。

この日も「退屈だからちょっと買い物付き合え」と呼ばれ着いてきた。

ジュン「だいたい、嫌だったら断りますよ。」
ことね「そういうことを言ってんじゃないの。」

本当に別に僕はことねが苦手だったり、嫌っているなんてことはない。
ただいつものこと「どう接していいか分からない」だけだ。





ことね「よし。あたしはもういいや。お前なんか見たいとこないの?」

一通り買い物を終えたことねがたくさんの荷物を抱えながら僕にそう言った。

ジュン「いや、もう見たし。特にないですね。」
ことね「あっそ。ちょっと荷物ウチまで運んでよ。置いてからなんか食べにいくよ。」
ジュン「いいですけど・・・」

ことねのにもつがあまりに多いため、一度家まで持って帰ることになった。


ことね「ほら、ここ。いいよ入って。」
ジュン「はい。」

案外普通の家だった。こんな性格してるから散らかってんだろうなとか思ってたけど綺麗に片付いてる家だった。

ことね「ちょっと一服してから行かない?疲れちゃったよ。」
ジュン「はい。」
ことね「ちょっと待ってろ。なんか飲むもの探してくる。」
ジュン「あ、ありがとうございます。」

ことねがキッチンへ向かった後、もの珍しさもあって部屋の中をうろうろ見渡した。
すると違う部屋の片隅に、小さな質素な仏壇があった。


ことね「何してんだ。」
ジュン「あ、すいません。」
ことね「なんだよ。女の独り暮らしの部屋ウロウロしやがって。」
ジュン「そんなつもりじゃないです。」
ことね「分かってるよ。ほら、缶コーヒーしかなかったけど。」


何故かものすごく熱い缶コーヒーを飲みながら煙草をふかす2人。
その沈黙が嫌だったのか、それとも本当に聞きたかったのか分からないけど

ジュン「あの仏壇。どうしたんです?」
と尋ねた。

ことね「どうしたってなんだよ。」
確かにそれもそうだ。気を使ったあまりに変な質問になってしまった。

ことね「どうしたって言われても、買ったんだよ。ほら。」
そう呟きながらことねがリビングにあった写真立てを取って僕に投げてよこした。

ジュン「両親?」
ことね「そうだよ。」

そこには静かそうな夫婦と小さな女の子とさらに小さな男の子が写っていた。

ことね「あたしが20なったくらいに母親が病気で死んでさ。それを追うようにすぐに父親も死んだよ。」
ジュン「あ、すいません。」
ことね「なんで謝んのさ、変なやつだね。」
ジュン「この子は?」
ことね「あたし。可愛いでしょ?」
ジュン「そうじゃなくて、男の子ですよ。」

僕は一緒に写っていた小さな男の子が気になった。

ことね「ああ、それ弟。かわいそうなのはあたしよりそいつかもね。」
ジュン「生きてるんですか?」
ことね「あ、生きてるよ。どっかで。」
ジュン「どっかでって?」
ことね「両親2人とも死んだの20の時よ?あたしだって遊びたい盛りだし20の女に高校生一人育てられる訳ないじゃん。だから遺産とか保険金半分渡して好きにしてって言ったのよ。それからあってない。」
ジュン「そうなんですか。連絡はとってないんですか?」
ことね「なんて言ってとりゃいいのよ。」
ジュン「いや、それはわからないですけど。」
ことね「だろー。」


僕はうすうすことねには「何か過去がある」と気付いていた。
不思議な事に、音楽好き、ましてや激しい音楽好きってのは過去になんらかがあった人が多い。
重たい音楽性に共感が持てるからなのか、何故かは分からないけど実際にそういうものだ。


ことね「将来のこととか、不安だっただろうにな。」
ジュン「高校生じゃそうですよね。」
ことね「今はお前と同じくらいの歳じゃない?立派にやってくれればいいんだけどさ。」
ジュン「大丈夫ですよ。」
ことね「そいつのこと知らないくせに」
ことねは笑いながら目を軽くぬぐっていた。

ことね「いやー、お前みたいに陰気なやつでね。それが姉ちゃんは心配だよ。」
ジュン「オレみたいに?」
ことね「そうそう。いっつも部屋に籠っててさ。くらーい顔して元気なくて。」
ジュン「オレそんなんです?」
ことね「そうじゃん。暗ーい顔して元気ないし。ま、お前らしくて良いっちゃ良いんだけどさ。」
ジュン「なんですか、それ。」
ことね「でも明るく振る舞うってのも悪くないよ?お前もたまにはやってみろよ。」
ジュン「いや、オレはそういうのは。」

ことね「そうだろうね。真っ黒い髪で目を隠すように伸ばしてさ。どこ見てるのか、何考えてんのかも分かりゃしない。ド派手に髪を金髪とかにしちゃってさ、がーっと酒飲んで暴れるような性格なら姉ちゃんはなんも心配いらないのにさ。お前も、あの弟もさ。」


ジュン「・・・・。」
ことね「なに黙ってんだよ。」
ジュン「いや別に。」
ことね「あー、暗いねー。嫌だねー、どいつもこいつも。」

涙を溜めた顔を見られるのが嫌なのか、ことねは缶コーヒーをぐーっと飲みほし片付け始めた。

ことね「だけど僕らはくじけないー。泣くのは嫌だ笑っちゃおう、進めー♪」
明るく歌いながら片付けをすることねを僕は黙って見ていた。











ことね「おい、暇か?」

また、ある日誘いがかかった。

ことね「みんなで飲み行こうかって。」
ジュン「あ、はい。良いですよ。」
ことね「じゃ、9時に駅前来いよ。」
ジュン「はい。」




僕は駅前にいた。
まだだれも来ていない。

するとすぐにことねはやってきた。

すばらくあたりを見回した後、驚いた様子で僕に近寄って来た。


ことね「お前・・なんだよそれ!」
ジュン「意外と・・似合うでしょ。」

ことねは大笑いした後に僕に
ことね「ああ、似合うよ。良いじゃん!」

金色に光る僕の髪を目印に続々と仲間たちが集まってきた。

ことね「よし行くぞ。進めー♪」



僕の頭をくしゃくしゃやりながらことねは歩き始めた。





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