Rocker and Locker

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駅前などによく置かれているコインロッカー。
数百円入れれば荷物を預けることができる便利なものです。

コンサートやライブに行くのが趣味の人もいると思います。僕もそうです。
こういったコンサート会場やライブハウスには必ずと言っていいほどこのコインロッカーが設置されています。

これは、ギュウギュウ詰めになることも多いですから大きなカバンなどを持っていられると邪魔になるし、
また貴重品や財布など、落としてしまうと回収するのはほぼ不可能です。スリなどの犯罪も考えられます。

こういったわけでコインロッカーを利用する人も多いのですが、ある日僕も例によってそのコインロッカーを使ったんです。

あのコインロッカーって最近では鍵の代わりにSuicaなどを使うところも増えていますけどだいたいが普通の鍵で施錠するんですね。
そんでもって、使える場所、つまりは空いているロッカーには鍵が付いたままになっているというわけ。

もちろん、その日僕は鍵のついている空いているロッカーを使おうと開けたんです。
ライブハウスのコインロッカーってどうしても利用者が多いことや数が少ないこともあってなかなか空いているところがなかったりするんです。
その日もほぼ全部使われている状態でした。しかし、一つだけまだ鍵のついたままのロッカーがあり、僕は「ラッキー!」とそのロッカーの扉を開けました。


するとどうでしょう。
なんと中には荷物が入っているじゃないですか。

大量の大人のおもちゃが。


ドピンクのウィンウィン動くアレからホットな下着。医療器具じゃないの?って感じの金属の謎の器具が出てきました。

加えて意味が分からないのが、全部袋などに入っていなくゴロンとロッカーの中に無造作に置かれているわけです。
それに100歩譲ってカバンが一緒に入っているなら、ライブの後にどっかで使うのかなどとも考えられますが、そういうわけでもないので本当に意味が分からない。
そして、なぜ鍵をかけていないのか。

いや、鍵をかけていないことは割とよくあることでして、単純にかけ忘れてしまっただけかもしれないですが、
それにしても中身が中身なだけとことん気になります。



もうどうしたらいいのよと頭を抱えていましたが、そろそろライブも始まってしまうし困ってしまったので、
とりあえずそのバイブだらけのロッカーに自分の荷物を入れ、鍵を閉めました。




そして、ライブが始まり終わってしばらくした後にロッカーに自分の荷物を取りに行くと
コインロッカーのあたりでごそごそしてる人がいたんですよね。

まあ、ライブの後だし鍵でもなくしたら帰る身支度でもしてるのかと思って特に気にしなかったんですけど
僕が鍵をだしロッカーを開けると「あっ。」と後ろから声がしたんですよ。


この日僕が行ったライブってのは海外のロックバンドのライブで、客層は16~25歳くらいの人が多かったんです。
また、僕が好きなジャンルの一つのデスメタルやブラックメタルでは、1人や2人殺してるんじゃないの?っていうお兄ちゃんや妙に露出の激しいババア。あと左手首を隠すように(ご察し)リストバンドをしている少女が客として多いイメージですが、
今回のは割のスタンダードな感じでして、またシックなバラードも多いものですから割りとふつうな感じの人が客として来ていたんです。



ちょっと想像してみてください。
とあるファミレスでアルバイトをしているフリーターがいます。
何の目的も夢もなくただバイトして暇をつぶしている状態。
しかし、ある日新しく入ったバイトの子を見て人生が変わります。

新しく来たその子は女子大生。茨城から東京の大学に来て生活費や学費などを稼ぐためにこのファミレスにバイトしに来ました。
そのバイト先でもその可愛らしさあってかとても人気です。同性からも異性からも好かれるようなそんな彼女。
みんな、彼女の事が大好きでした。

フリーターの彼も例外ではありません。それも「異性として」彼女のことが好きになりました。

ある日、彼は決心します。
食事に誘おうと。

仕事が終わり控室で待っていた彼。彼女ももう少しで仕事をあがりここに来るはずです。

「お疲れ様ですー。」

来た。
彼は勇気を出して声をかけます。

「お、お疲れ様・・・。」

そういうと黙ってしまいました。

彼女は椅子に座り、紅茶を飲んでいます。
続く沈黙。

チクショウ。なぜ俺は声をかけられないんだ。
彼は自分自身にいらだちます。

ダメだ。こんな情けない俺に彼女が振り向くはずもない。
帰ろう。俺には一人がお似合いさ。しがないフリーターだ。

そう思って荷物を手に取ると

「あ、あの・・・!」

彼は驚き振り向きます。

「あの・・次のお休み、暇ですか・・・?」
彼女がそういったのだ。
パニックになる彼。どういうことだ。
彼女が俺を誘う・・・?


「ももももももちろん!」
慌てながらそういうと、彼女は

「前に・・○○ってバンド好きって言ってましたよね・・?チケットがあるんですけど友達がいけなくなっちゃって・・。よければ一緒に行きませんか・・・?」


「え?いいの?」
「あの!迷惑じゃなければで良いんですけど・・・!」
「い、いきたいです!」
「ホントですか!ありがとうございます!」


彼女は顔を赤らめてこっちをじっと見ていた。



こんな感じの女の子が、僕の方をみてたんです。

そこで僕はふと思い出しました。
僕は鍵のついたままのロッカーを使っていた事。
そのロッカーの中には荷物が入ったままだったこと。
その荷物は大量のアダルトグッズだったこと。


まさか、この子の荷物だったのか。

あんなにエグイのがこの可愛らしい子に出たり入ったりすんのかよ。と僕は世の中の不条理を嘆いたものです。


「あ、あの鍵かけ忘れてしまって・・・。そこだと思うんですけど・・・・。」
彼女は顔を赤らめてこっちをじっと見ていた。


「こんなものより、もっと良いもの使ってみない・・?」
そうやって脅して喰っちまおうかとかも考えましたが、さすがにそれは人間としてどうかとおもうので、
にやにやしても突っ込んでも気持ちが悪いし、ここはさわやかに振る舞おう。
僕がそう思い、

「鍵が開いてたから使っちゃった!」
と、それだけ言い彼女に鍵をポイっと投げて渡し、去って言ったんです。





「キャー!」
例の彼女でした。
その叫びを訊いたスタッフがすっ飛んできて僕に
「荷物!忘れてますよ!!」
と叫んだ。

彼女は顔を抑え、僕を指さしてます。
それは恥ずかしさでもなく照れでもなく、「嫌悪」の顔でした。


どうやら、彼女のロッカーが僕の一つ左だったようです。鍵をかけ忘れていたそのロッカーはスタッフが中身を回収して保管してあって、その後に違う人が使っていたようです。


「違う。オレのじゃない。」
僕は一生懸命スタッフに説明しました。
鍵のついてるロッカーを使おうとしたら中に入っていた事。
時間がなかったのでそのままそこを利用したこと。
彼女が鍵かけ忘れていたと言っていたこと。
彼女は私の荷物はそこだと僕のロッカーを指した事。

色々説明しました。その結果、スタッフの彼女も納得してくれました。
後から店長から聞いた話では、前日にここでライブした「アナルブレイカーズ」というバンドの忘れものではないかということでした。




迷惑をかけたということで店長が僕と彼女にライブハウス内にあるバーで一杯奢ってくれるという事になりまして、
お互いに「勘弁してよ、もう」状態でした。

同じライブを見に来た手前、趣味も合うし店長の饒舌さもあってちょっと仲良くなって来ました。
彼女が「アレ、どうやって使うんですか?」というと、店長は
「そんなもん突っ込んで入れたり出したりするんだよ。」
「違いますよ!ライブでの話ですよ!」
「がっはっは!」

そんな感じですっかり閉店までいてしまい、店長も「もう終わりだからねー」と言いだしましたのでライブハウスを出ました。

ライブハウスを出ると彼女は「あっ」と小さくつぶやきます。
「どうしたの?」と僕が聞くと

「終電・・無くなっちゃった・・・。」



こんなことなら1,2本持ってくればよかった。
僕はアナルブレイカーズに感謝しつつライブハウスを後にしました。




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