カブトムシと夏

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暑いですね。夏ですもんね。

学生はもう夏休みですか。僕は夏休みなんてありません。死んじゃえばいいのに。
まあ、僕だって昔は一応小学生の時代もあったし中学生の時代もありました。
当然その頃は夏休みがあり、とくに何をするわけでもなくボケーっと過ごしたんですが、当時で大体1か月あまり、いったい何をして過ごしていたのか覚えてません。
もし今1か月の休みをもらえたら、何をして過ごそうか考えてしまいそうです。

今の子はどうだか知りませんが、僕が子供のころはよくオヤジと虫取りに行ったものです。カブトムシとかクワガタなんかを取ってきては自宅で飼い、一生懸命世話をしていたにもかかわらず朝起きるとなぜか頭がもげていたものです。

オヤジが休みのたび、一緒に朝早く起きて取りに行ってたんですが、ある日大きな木の下に花が供えてあったのを見てから行くのをやめました。

カブトムシとかって取れる「木」が決まっていて、取れるポイントってのがあるんですよね。
ある夏、どうにも寝付けなかった僕はふと思いつき深夜に虫でも取りに行くかっとプラプラっと出かけたんです。


僕の住んでるところはそこまで都会ではないのでちょっと車を走らせれば虫が取れるような山がいくらでもあるんですよ。
とはいえ民家も多くありますのでちょうどお盆の時期で、あちこちに今時珍しくナスとかキュウリとかが置いてあります。いやらしいですね。
そこに行きまして、飼うか飼わないかは別として久々に虫とりを楽しんでたんです。

自然が破壊されているとかなんとか今問題になってますが、それがなんともそんな心配なんかないんじゃないかってほどたくさん虫がいまして、カブトムシやクワガタなんかと一緒に何ともキモチワルイ足がいっぱいある虫なんかがいて一人でヒャーヒャーやってたんですね。

そんなことしてたらとある親子とばったり会いまして、息子と一緒に虫取りに来たんだそう。
僕はそんな虫持って帰っても仕方ないですし、その親子に今までにとった虫を全部あげたんです。

僕はあまり虫に詳しくないんで分かりませんでしたが、ヒラタクワガタっていうんですか。結構貴重なクワガタの一種を捕まえてたようで、息子は狂喜乱舞。「マジ友達に自慢できる」とスゲー盛り上がってました。

父親も喜ぶ息子を見て「本当にありがとうございます。」とお礼を言われました。


僕もなんだか嬉しくなって「大事に飼ってあげてね。」と車に乗り込み帰ることにしました。
もう真夜中もいいところで、僕以外にまったく誰もいない一人真っ暗な山道を走っていると

「ガタン」

と何かを轢いたような音がしたんです。

石か木かなんか轢いたかな。
その時僕はその程度しか思ってませんでした。
一応車を降りて確認しましたが特に何もなく、もちろん何か動物を轢いたわけでもなさそう。


特に気にせず走っているとしばらくして異変に気づきました。

しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり・・・・。


明らかに車の下から変な音がします。
その音に気付いたのはやはり山道のど真ん中。
正直言って怖いです。降りたくないです。

気にはなるものの、少し明るい市街地まで走ろう。
僕はそうして車を走らせました。

山道を降り、市街地になるとその音はさらに大きく聞こえました。
道がアスファルトに変わったからなのか、音はシューシューと何かを引きずる音に変わりました。


その時です。ふと、僕はある話を思い出しました。


昔、その山道で高速道路の建設が計画されていました。
地元住民は美しい山を守るために猛反対したそうです。
しかし、その抗議もむなしく時代の流れには勝てなかったのか、高速道路の建設が始まりました。

建設が始まってからも抗議は続き、工事関係者とくにその責任者へ地元住民たちの抗議は続きました。
最初は立て看板程度だったそうなんですが、嫌がらせのように抗議は過激化していき、工事をしていると罵声を浴びせられたり、ものが投げられたりしたそう。ひどい時工事車両のガソリンが抜かれたり、窓ガラスが割られたりもしたそうです。

問題にはなったのですが当然工事をやめるわけにもいかず、その工事の責任者は頭を抱えていたそうです。

ある日、工事を進めていくと工事関係者はさらに頭の痛い問題に直面してしまいます。
工事予定だった山道に、きっと嫌がらせでしょうね。稚拙な神社というか鳥居と石碑だけなんですが、そういったものが地元住民によって勝手に作られてしまいました。
お盆だっただけあり、そこにはナスとかキュウリの精霊馬が置かれていました。

適当に作ったものとはいえ、やはり日本人。そういったものをブチ壊すのが気が引けるわけです。
その責任者は困った挙句工事の依頼人、つまり国に報告しました。
しかし、工事はやめられないし、そもそも住民たちの嫌がらせのせいで工事も遅れてる。さっさとブチ壊して早く工事を進めろと言われてしまうんです。

その責任者は仕方がないとその手作りの神社を打ちこわし、工事を進めました。

そんなある日、その神社を壊したことを知った住民の一人が責任者に対し
「なんとバチあたりな。」
「お前は呪われた。」
「人の心がないのか。」
「お前は死ぬ。祟りで死ぬ。」
と言い始めたんです。

もうノイローゼに近かった責任者はもうやめてくれ、おれは仕事をしてるだけだ。邪魔しないでくれ、と反論します。
もちろん、その住民は聞きもしません。
「なんとバチあたりな。」
と、その責任者に罵声を浴びせ続けました。



さらにはある日、挙句の果てにはその工事車両の前に座り込み工事を邪魔し始めました。


それを見たその責任者は何かがキレてしまったのか、工事車両でその住民を轢き殺してしまいました。
車で住民を轢き作っていた途中の道路の上を何メートルも引きずったそうです。
作ったばかりの道路の上には一筆書きのように血の跡が続いていたそう。


とうとうやってしまった。
責任者は住民の死体を見ながら頭を抱えます。

おれは仕事をしてるだけだ。道路を作るんだ。

責任者はそのこま切れ肉のようになった亡骸を土嚢に詰めました。
あまりに長く引きずったため、その肉はほぼ削げ、土嚢一袋程度になっていました。
その責任者はその土嚢を埋め、その上に道路を作りました。




それから何年か経ち、そこには高速道路が作られました。
しかし、ある噂が広がるのです。

そこの高速道路を通ると「ナニカ」を引きずるような音が聞こえる・・・と。







「あそこが・・そうだよな。」

僕がそんな話を思い出したのもまさにその高速道路の真上の橋を渡っていたからでした。

いや、まさかな。
大体、ここは違う。噂の高速道路はこの下なので、そこは通ってないし。そもそもただの噂じゃないか。
考えすぎた、早く帰ろう。

と僕は家に向かいました。

しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり・・・・。

しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり・・・・。


明らかに何かを引きずっている。
怖い。


しかし、もし何かを本当に引きずっているのなら、そのまま大きな道路に出たら危険かもしれない。事故にもなりかねません。

ふう、と息をつき車を止めました。


携帯で照らしながら車の下をのぞきこみます。

「袋・・・?」

大きなゴミ袋のようなものが引っかかってました。

土嚢、だ。



ウソだろ、まさか・・・。


怖くなった僕は土嚢を引きずりだし、投げました。
ぼてっと音を立てて土嚢は車の下から出てきました。
なんか水っぽいというかいやに重みのあるものが入ってました。


そんなことがあるはずない。

僕は意を決して土嚢をひっくり返しその「ナニカ」をバサっとだしました。


「ナスとキュウリを丸ごと飲み込む未亡人、官能の盆暮れ熱帯夜」


エロ本だ。

それも超大量に。



土嚢の中にはぎっしりエロ本が入ってました。しかも水を含んで重くなってます。

「なんとバチあたりな。」



うっとりとナスを持ってる女の表紙を見ながらひとり思うのでした。




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