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ミニーの公園

僕は土曜日、娘を保育園へ迎えに行く。
平日は嫁さんが行ってるんだけど土曜だけは保育園が早く終わってしまうので仕事の関係上間に合わないことが多く、
僕は土曜日は休みの事が多いので僕が迎えに行きます。

別に嫁さんがウザいとかそういうつもりではないですが、僕はこの土曜日の数時間、唯一娘と二人になる時間です。
普段家に帰れない日も多く、ましては娘と二人など到底ないのでこの時間が僕は好きです。
よく帰り道寄り道してお菓子を買って公園で食べたり、本屋さんに行って本を買ったりしています。

そんなある日、娘が好きな公園があり、よくそこに行くのですが、
その日もコンビニでお菓子を買い、公園で食べて遊ぼうかと公園へ行きました。
そこまで大きくない公園ですし、人も少なく人見知りの娘にはもってこいの公園です。

その日は珍しく一人、高校生の女の子がいてブランコに一人座っていました。
どうせ彼氏か何かと待ち合わせだろう、と僕は気にしていませんでした。

お菓子を食べながらはしゃぐ娘。かったるそうにベンチに座ってそれを見てる僕。
すると娘がべシャっとまるで漫画のように転びました。怪我こそなかったもののお菓子は泥だらけになり到底食べれるような状態じゃありません。
泣きじゃくる娘、僕はイライラしつつも「また買ってやるから。」と言っていたら、先客の高校生の女の子が
「これあげる、だから泣かないで。」と持っていたアメをくれました。

人見知りの娘は恥ずかしそうにそれを受け取りました。
僕は「ありがとうは?」というと照れくさいようで言いません。
「ごめんね、人見知りで・・。ありがとう。」
僕はその女の子にお礼を言うと女の子はにっこり笑った後に公園を去りました。


また違う土曜日。
僕らはいつもの公園に行きました。

公園に到着すると「アメくれたお姉さん。」と娘が言うので目をやるとこの間アメをくれた高校生の女の子がまた一人でいました。
高校生の女の子はこちらに気づき手を振ると、相変わらず人見知りのうちの娘は照れくさそうに僕に隠れます。

おそらく吹奏楽部なんでしょうか。楽器の入っているケースを持っていて、それをベンチに置き一人で公園にいます。
ウチの娘がキャッキャ公園で遊んでいる間、僕はこの前のお礼をしつつ少し話しかけました。

「なんでいつもここに来てるの?誰かと待ち合わせ?彼氏?」

「いや、そんなんじゃないですって!」
「わかった!彼氏と別れたばっかか!はーん!」
「違いますよ!バイトまで時間あるから一度家に帰るのも面倒だし時間つぶしてるだけです!」

品のないおっさんが女子高生に絡むというどうしようもない時間が流れます。
すると娘が戻ってきて「あ、わんわん!」と言います。
犬なんかいません。何言ってんだこいつ。

娘が指さす先を見ると、楽器ケースに写真の入ったキーホルダーのようなものを見つけました。
その写真は小さな犬で、それを見て「わんわん。」と言っていたようです。


女子高生は
「わんわんだね、ミニーっていうんだよ。」
と教えてくれました。

「可愛いねー」
となぜか僕に小さく言った娘はまた走って滑り台に行ってしまいました。


おっさんの僕は女子高生と何話していいかもわからないのでその場しのぎで
「今この子何歳なの?」と聞きました。

「もう15歳なんです。たぶん、もう長くないかな・・。」
と暗い顔をしてました。余計なこと聞いてもうた。


僕も最近実家の犬を亡くしたばっかりでその悲しみが分かります。
すると彼女はこの公園に来てる理由を教えてくれました。

部活が終わり、いつもなら一度家に帰りバイトまでの間この公園にミニーを連れて散歩に来ていたそう。
しかし、ミニーが歳をとり、具合が悪いため散歩はもう行けないらしいのです。
となると一度家に帰るのも面倒だし、かといってどこかに行くほどの時間もないのでなんとなくこの公園に来てしまうらしい。

辛そうに話す彼女。余計なこと聞いてもうた。


あたりが暗くなり始め、僕らも家に帰ることにしました。
バイバイ、と手を振る彼女。娘は相変わらず照れくさそうに僕に隠れます。


帰り道、急に娘が僕に言いました。
「わんわん、かわいかったね。」
彼女の犬、ミニーの事でしょう。

「こんど、あえたらいいね」

んー、たぶん会えません。具合悪くて外に出れないですから。

「ミニーちゃん、お風邪引いちゃったんだって。」
僕は苦し紛れにそうやって説明しました。
「そっかー、かわいそうだね。」

娘は何の疑いもなく納得しました。





また違う土曜日。
いつもの公園に行きたい、というのでまたコンビニに寄りお菓子を買ってから行くことにしました。

しかし、なぜでしょう。普段は割と聞き分けの良い娘がアメを3つ持ってきました。
「ダメだよ、一個だけだよ。」
と僕は言うと
「おねがい、3こかって。」と聞きません。

「ダメだよ、なんでそんなわがまま言うの?」
というとシュンとして聞きません。
「わかった。じゃあこっちにする。いっこ。」
と持ってきたのがスゲーデカいチョコがいっぱい入った袋でした。高い。

「さっきの3個持って来い。」
この知能犯め、とやれやれと思う僕でした。


僕たちは買ったお菓子を持っていつもの公園へ行きました。
やはりあの高校生は来てました。

すると珍しくウチの娘がその高校生の元へ歩いていき、無言でアメを2個わたしました。
その後、僕の方へ走ってきて僕に
「いっこはおねえさんの、もういっこはミニーちゃんの」
と言いました。
「アメたべたらおかぜもよくなるよ。」
と僕に言います。直接言ってやれよ。

僕は女子高生に説明すると
「そっか、ありがとう!」と言ってくれました。


ひとしきり遊んだあと、帰り道娘は僕にこう言いました

「ミニーちゃんおかぜなおるといいね。アメたべたらなおるかな。」
「うん、きっとなおるよ。」
「おかぜなおったらあえるかな。」
「うん、きっとあえるよ。」

僕はそう答えました。
しかしウチの娘は知りません。
ミニーちゃんが息を引き取ってしまったことを。









僕らはそのあともいつもの公園に行きました。
あの日から女子高生は公園にはいませんでした。
もちろん、ミニーちゃんも。

しかし、3歳児なんてアホですから、ミニーちゃんの件は覚えてないというかわからない物です。
普通に遊んでます。
僕もまあもう来ないだろうな・・。と思っていました。









そんなある日、いつものように公園に向かうと娘が

「ミニーちゃん!ミニーちゃん!!」と叫びます。

そんなわけない、と僕が公園を見渡すと

走り回る小さな子犬とそれを連れているあの女子高生。

「ミニーちゃんだ!」


どうみてもミニーちゃんじゃないです。そもそも犬種が違う。


「あ、こんにちは!」
女子高生が笑顔で話しかけてきました。

「本当は辛くって、もう二度とこんな思いしたくないからもう飼うのやめようって思ってたんですけどね。」
どうやらミニーちゃんをなくした後、辛くて犬なんか飼いたくないと思っていたらしいですが、犬を飼ってる人は犬無しじゃ生きていけないんですね。どうしてもまた犬を飼ってしまうんです。
「くよくよしてても仕方ないと思いまして。ミニーちゃんも私がこんなんじゃきっとゆっくりできないですもんね。」
「それで里親募集で見かけたこの子をミニーちゃんと遊んだ公園でのびのび遊ばせてあげたいなって思ったんです。」
「よかった元気でたみたいで。」
「ええ、アメ食べたから元気出たんです。」




「かわいいねーミニーちゃん!」
背中をなでるうちの娘。

「アメたべたから元気になったんだよ!」
ウチの娘に女子高生はそう言いました。優しい嘘です。
「そっかー!よかったねー!」



「名前ミニーちゃんっていうの?」
「いいえ、クッキーです」
「そうだよね」


その公園には、なぜか「ミニーちゃん」と呼ばれる子犬クッキーと、
すっかり元気になった高校生が今日も散歩しています。






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